「やっと……見付けた」 「――――シキ」 無意識に呟くと、彼がゆっくりと振り返った。 「てめェ、よくもあの時は――――殺してやる!」 無意識の内に漏れた声は、腹の底から湧いてくる昏い怒りのままに低かった。 リンは、ウエストバッグへと手を滑らせると、両掌に鋭いアイスピックのような小剣――――スティレットを納めて構える。 「何のつもりだ?」 シキは自分の命を奪おうとする者を前にしているというのに、刀を持つ右手をだらりと下げたまま構えすらしない。 「何のつもりだ? だって? 仲間を殺した、くせに」 心地好いまどろみの中、リンは無意識に寝返りを打とうとして、耳を突いた嫌な金属音に眉を顰めた。 チャリ。 枕元を手で探ると、細いが決して自力では切ることのできない鎖に触れる。 「く……」 鎖を指先で遊ぶ内にまどろみの心地好さは消えて、リンは細いそれをきつく握り締めた。 楽しいのかよ、こんなことして――――。 シキが、リンだったからこそ他とは違う扱いをしたとは思えなかった。リンはシキにとって他の者たちと同じだ。 あの事件の時も、声を掛けられたのは彼のターゲットがペスカ・コシカのメンバーの一人だったからだ。今も女のいないトシマである程度代用ができる者ならば誰でも良かったのだろうと思う。敢えて理由があったとしたら、リンは他の者と立場が違うから、毛色が違って選びやすかったのだろう。 「――――最悪だ。まだ殺されていた方が」 「う……あ、この――――昼間っから、この、色情っ魔あっ、あっ」 非難を込めてシキの肩を引き離そうと力を込めると、意外にも容易く遠退いた彼が、リンの中心を掴んだ。 「あは……んっ」 直に握り込まれて、痛みとも快感とも捉えられない大きな衝撃に仰け反る。一瞬で瞳に涙が張り、目尻から零れた。 「うあ……あ、ああ」 「色情魔はお前だろう」 「んん……」 シーツに身を沈めて喘ぐリンに愛撫を与えながら、シキが真上から見下ろしてくる。 「見……な。んっ」 「喉が渇いたと言っていたな。飲ませてやろうか」 「あ、あ……っ」 喉の渇きはまだ持続しているのだろう。だが、正直そんなことを思い出している余裕はなかった。それなのに、シキはリンから手を放すと前髪を掴んで引き起こし、正面を向かせる。 「はあ、はあ……」 シキがベッドに上がってくる。ベッドが大きく揺れて、リンは倒れそうな身体を手を突いて支える。いや、漸く支えたといのに、無造作に後頭部を掴んで引き倒された。 |