「ご覧、ユーリ」 フレンが見上げたのは、壁に一定間隔で配置された窓だ。高い天井の上の方まで達している細長の窓には、聖堂に入った瞬間ユーリも目を奪われたステンドグラスが施されている。 「全く人々の信仰心というのはすごいな。建物が頑丈なだけでなく、ステンドグラスもほぼ残っている。どれだけこの建物に力が注がれたのか分かる」 「信仰、ねえ……」 皮肉な話だ、と思う。建物とステンドグラスが残っていたのはすごいと思うが、それらを造り上げたのは自分たちの平安と繁栄を祈ってのことに違いないのに、彼らの町は今はない。 「どうせ、しっかり建てるなら、壁や住居こそに力を入れるべきだったんじゃないのか?」 「そういう問題じゃないんだよ」 「そうか?」 ユーリは、神を信じない。どんな窮地に追い込まれても、最後に頼りになるのは自分の腕と、絆の深い仲間たちだと思っている。それでも訪れる絶体絶命の時、偶然に期待し祈ることはあるが、それは神に祈るのとは少し違うものだ。 釈然としない様子のユーリの横顔に、フレンはクスリと笑った。 |