自分のやったことの責任は自分が取る。人の命をこの手で絶ったことも、同じように考えていた。その罰は、自分だけが払うものだと思っていた。だからこそ、ボーダーラインを越えることができたのだ。 それが、実際には、ユーリの犯した罪は、本来罰を受けるべきユーリ以上にフレンを苦しめている。 何てことだ……。 「フレン。済まない。俺は――――お前を苦しめるなんて、思ってなくて」 「僕、だけじゃない。エステリーゼ様だって、君の大切な仲間たちだって、君がもしいなくなってしまったら――――」 フレンが、自分の言った言葉に驚いたように息を呑んだ。 「フレンっ」 強張っていたフレンの頬が見る間に血の気を失っていく。言葉だけでも、これほど過剰に反応する彼を見れば、本当に刑を受ける日が来た時、ユーリは後悔していないなど言えなくなってしまう。 フレンは硬い表情のまま動かない。蒼白な顔面の中で、瞳がいつもより鮮やかな色をして見えた。青という涼やかなはずの色が、揺らめく不穏な炎の所為でギラギラとしているように見える。 「君は――――」 フレンが掠れた声を漏らした。 「いつだってそうやって自分だけで決めて――――そのことが周囲にどう影響するのかまで考えてくれない。他に方法があったかもしれないのに、君の中だけで片付くはずがないのに」 「……」 「あの時もそうだった。君が騎士団を退団した時に僕がどんなに衝撃を受けたか分かっているのかい?」 「それは……でも、フレンと俺の考え方が違っただけで、でも目指すところは一緒だっただろ?」 フレンがそんな昔のことを持ち出すとは思ってもみなかった。それに、ユーリが騎士団を退団したことは、フレンも承知してくれていたと思っていた。 今の今まで間違っていないと思っていた過去の判断が、ぐら付いた。 「一緒にやろうと言ったじゃないか」 「ああ、だから、お前は内部から、俺は外部からにすることにしたんじゃねえか――――」 「そんな役割分担を、僕たちはいつ決めた? 君がそう思っているだけなんじゃないかい?」 「でも、フレンだって――――」 そういうことだと分かっていただろ? 互いの役割なんて、わざわざ相談なんてしなくても決まっているようなものだったじゃないか。だから、あの時も最終的には止めなかったんだろ? その前だっていつも――――。 そう思ったところで、ユーリはある可能性に気が付いて愕然とした。 もしかして、いつもも上手く行ってなかったのか? 俺がそう思っていただけだったのか? 何か事を成す時、ユーリはフレンと綿密な計画を練った覚えがなかった。いつも自分の役割はこれだと何故か確信していて、それで良い結果を得られてきたから、自分の行動がフレンの期待に応えられていたのかどうか、確かめたことがなかった。 「知ってたさ。君が下町でくすぶっている間も、君なりの道を探そうとしてるんだと思っていた。でも――――もし、一緒に目指しているのだったら、それさえも僕との共同作業であるべきだったんじゃないのか?」 「あ……」 「今回のことだって、あの時もっときちんと話し合っていれば――――」 話し合っても、フレンにラゴウを止められる術はなかったはずだ。だから、ユーリは憤りに任せて、フレンを打ちのめすような問い掛けをしてしまったのだ。 「俺は――――あの時の俺には他に道を見出せなかった。何度も言うが、俺は後悔なんかしちゃいねえ」 「それで? 君は僕のことを考えてくれたのかい? エステリーゼ様は? 君の大切な仲間たちは? 僕らが君を失ったら、後悔しないとでも? 君を失ってしまうのかもしれないなんて――――僕は」 フレンが頭を抱え込み、うつむいたまま金色の髪を掻きむしった。 「フレン――――」 「頭がおかしくなりそうだ」 |