夜神月  夜神月について色々考えました。
 当初は、月とキラ全くの別人格とも思えましたが、考えていくとそうでもないようです。

 あの殺人鬼のような黒いキラになるのはLを前にした時だけで、普段はリュークにデスノートの使い方を説いている時のように、明るい無邪気なキャラなのではないかと。
 但し、原作ではLとの対決がメインで描かれているので、通常モードの月はほぼ見られません。

 さて、キラ……もとい月にとってのL。
 月は非常に頭が良く、また運動神経も卓越しており、また考えた事を実現できるだけの器用さも持ち合わせています。
 故に、彼はこれまでの人生の中で挫折とか敗北というものはおよそ味わった事がないのではないかと思います。
 その彼と同等の頭脳(と多分運動神経)を持つLは、友として出会ったのであれば、この上なく良きライバルとしてまた良き理解者として共に高め合えたかもしれません。
 しかし、敵として出会った以上、挫折・敗北経験のなさが彼を壁と感じる事自体を苛立たせ、また負けたと感じた時にはその怒りの感情を抑える事が出来ません。更に、Lへの完全なる敗北は己の死も意味します。彼はこのストレスに耐えられません。
 月は、Lの前では冷静な思考を失います。

 では、Lを前にしていない時の月。
 デスノートを手にした月は、それが本物かどうか、勿論本物ではないと思っているからこそ、誘惑に駆られてその力を試します。偶然か、それとも本当にその力が行使されたのか、そこに名を記された人が死にます。
 大抵はここで罪の意識に苛まれます。恐らく、一生立ち直れないかもしれない傷を負うでしょう。
 原作の月は、すぐに2度目を試しましたが、明らかに性格が違って見える、後から描かれたキラの記憶を無くしている間の月であれば、すぐには試さなかったと思います。
 何故ならば、彼はデスノートが本物かという事を確かめてしまえば、己が殺人を犯した事を認めざるを得なくなります。幾ら月の正義感が強く、相手が犯罪者でもそれは容易には受け入れられない筈です。原作では2人目を試したところで苦悩しています。ノートに名を書くだけで人が死ぬなどそもそもありえない話だし、偶然だと信じたいが、タイミングのあまりの良さにもしかしたら、という気持ちもある。感情的に本物である可能性が高いと思っている以上、すぐには試せないと思うのです。

 2番目か3番目かの差はあるものの、彼は自己正当性の為に考えます。そうでなければ、たとえ犯罪者であろうと己の手で殺してしまった(と思われる)事を、受け入れる事が出来ません。
 それが本物かどうかはひとまず置いて(原作では2度試しているので、既に偽物である可能性はなくなっていますが)、自発的にではないものの、もしも本物だったらの使い道などについて考えます。恐らく生活の中で犯罪絡みの理不尽さにぶつかった瞬間などに、ふとあれが本物だったら放ってはおかないのに、といったものだと思います。
 そして、それを実行する事が正しい事で、世の中の為になる事であると判断します。犯罪者を裁く事が自分の使命と考える事で、過去犯してしまった殺人の正当化を図ります。二度目(原作では三度目)のデスノートは恐らく既に試行ではなく実行手段として使う事となります。
 こうして、白月も結果的に同じキラとなるのです。

 ただ、悲しいかな。月はとても頭が良いのに、感情面ではLの言う『負けず嫌い』以上に子供であると思います。
 月は通常では支配出来る筈のない、人の命を絶つ力を手にした事により、奢ってしまいました。
 「新世界の神となる」発言や、それを誤りであるとは微塵も感じないところが、彼が正常であるのだとすれば、精神的に未成熟であった子供の発想としか受け取れません。

 彼の中では自分は正義であるという自負があるので、前述のL、もしくは自身を脅かす存在(月=キラを知る者、その真実に迫ってくる者、ミサもある意味それに当たると思います)以外に関しては、原作でも少しばかり表現されている通り公平な裁きを与えます。
 彼は自身を神に見立てるだけあって、その中に悪魔は存在しません。
 彼は正しい事をしているので、他者を殺す事によって精神的ダメージを負いません。

 また、自己を守る為に殺す、もしくは殺そうとする場合、正しい事を為そうとする自分を妨害するもの=悪であるという図式が、本人がその人達を悪と認識しているかは置いておいて(不幸な人、程度かな。でも、それは心のどこかで邪魔をする者を悪だと捉えているからだと思います)、仕方ないと感じる事はあっても、精神的ダメージは負いません。
 恐らく、それが肉親であっても、他者よりは悲しむかもしれませんが、同様に思います。

 いつかリュークがデスノートを使った人間に普通の死があると思うなよ、みたいな事を言っていたと思うのですが、自分が人道を踏み外している事に気付けずに、このまま突き進んでいく事が、月に与えられた報いなのかもしれません。



 長々と書きましたが、この考察は、実は、ものすごーく期間限定な存在世間一般的に言う白月にハマってしまった土岐が、自分を慰める為だけに考えたものだったりします。
 だって、考えれば考える程、白月がもう一度出てくるチャンスってなさげなんですもの。月が己を正当化したように、土岐も心のよりどころをしっかりと作らないとやっていけませんって!
 思い切りご都合ですので、真に受けてはダメですよ!!
 ですが、ウチはこの方向で参ります(笑)。


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